アル中の脳内日記

アル中親父による一人雑談ブログ

狭山の黒い闇に触れる 993

被害者が通っていた川越高校入間川分校。

入間川分校に昭和27年4月11日、2年間で女子を対象、家庭科を中心に昼間に授業を行う「別科」が開設された。昭和20年代の後半は、農村の経済事情や女子教育に対する古い考え方もあり、女子の進学率は低かった。入間川分校別科は、この課題に応えたものであった。高校進学率の向上に伴い、入間川分校別科は昭和40年4月1日募集を停止し、翌年3月31日廃止となった。修了者は324名である。

【公判調書3100丁〜】

               「第五十七回公判調書(供述)」(昭和四十七年)

証人=諏訪部正司(四十八歳・浦和警察署刑事第一課長)

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福地弁護人=「彼氏のところに泊まったのではないかという疑いを五月一日には一応持ったわけですね、先ほどそういうことを言いましたね」

証人=「はい」

福地弁護人=「頭の中に入れたと」

証人=「はい」

福地弁護人=「そういう考え方に至る理由と言いますかね、なぜ、そういう風にあなたが見当をつけられたのか、その理由はどういうところにあるんですか」

証人=「その一点のみについてだけじゃありません。そうすると、お友達といっても男友達もあるかもしれない、あるいは女友達のところへ泊まりに行っているのかもしれない、あるいは親戚に行っているかもしれない、こういったことで、それ一点には絞っておりません。その中からそういうものを踏まえて、これは娘のことですからね、あまりにも、必要なところへは聞かなければならんということもありますが、たまたま、そういったところに泊まっていたとすると、今度はその土地の人からあの娘はこうだ、ああだ、警察で調べに来たということになってしまうと悪いというところから、努めて、まあ、狭く三人という風なことで絞ってやったわけです」

福地弁護人=「そういうことを聞いているんじゃなくて、確かにね、女友達のところへ泊まっているのかも知れないとか、親類の家に泊まったのかも知れないということは普通想像できることだけれども、さっき、あなたが彼氏のところに泊まったのではないかということで、そういうことを念頭において捜査にあたったというようなことを言われたから、彼氏のところへ泊まったのかも知れないという風に考えるようになったのはどういう理由があるからかと、それを聞いているわけです。端的に答えて下さい」

証人=「ですから、同じ比率です。親戚に泊まったのかも知れない、あるいは、女の友達のところへ泊まったのかも知れない、それから彼氏のところへも泊まっているかも知れない、こういう三点です」

福地弁護人=「十五才になる女の子が彼氏のところへ泊まるのと、親類のところへ泊まるのとでは相当の開きがあるんじゃないですか、それを全く同じ比率と考えているんですか」

                                            *

裁判長=「問いの趣旨が分かるんですか、三つ並べて言っているかね、それでね・・・」

福地弁護人=「裁判長、もう結構です。次の質問に移ります」

裁判長=「いいんですか、そういうところを問いっ放しにしては、かえって困るんじゃないですか、いいんですか」

福地弁護人=「私のほうは一向に構いません」

                                            *

裁判長=「あのね、こういうことを言っておるんですよ。男友達のところへ泊まったかもしれないと、そういう風に考えるについては、やはり、その人にそういう風な疑いを受けるべき理由があるから、普通はそう思うんだね」

証人=「はい」

裁判長=「だから、そう警察官をして、そう思わせるような理由が被害者にありましたかということを弁護人は聞いておるんです」

証人=「それは、ありましたかということ自体をお話し申し上げるのには同じ、今、出しました親戚だとか、女友達だとかその比率と同じような気持ちで同じように見たと、こういうことです」

裁判長=「だから同じように見たというのは結論なんだね、結論であって、三分の一ずつの疑いというか、疑いというと言葉が強過ぎるかもしれないが、可能性がね、三分の一だけ、そういう可能性があるかもしれないと考えるについては、もっと具体的な理由があったんではないかと聞いているんです」

証人=「別にありません」

裁判長=「そうすると、一般的にたとえば、年頃に近い女が家を出るとかなんとかという場合には誰も一般的にそういうことを考えるじゃないかと、あなたもそういう風に考えたに過ぎないということかどうかということです」

証人=「そういう風に考えたに過ぎません」

裁判長=「じゃ、そう聞いておきましょう」

                                            *

福地弁護人=「学校へですね、警察官が聞込みに行ったようなことがありますか。五月一日の夜、川越分校に聞込みに行ったようなことはありますか」

証人=「あると思いますが、記憶に残っておりません」

福地弁護人=「そういう報告を受けたような記憶はありませんか」

証人=「記憶が薄らいでおります。はっきり申し上げられないですね」

福地弁護人=「当時、川越分校にですね、用務員、まあ、普通は宿直をする人だと思うんですがね、用務員の人がいたかどうかは記憶がありますか」

証人=「いたと思います」

福地弁護人=「いたという記憶ですね」

証人=「はい」

                                            *

石田弁護人=「中学時代の学友をその後捜査されましたですね」

証人=「はい」

石田弁護人=「その学友というのは、高校生が主だったわけでしょうか」

証人=「中学生が主ですね」

石田弁護人=「中学の時の善枝さんの同級生」

証人=「はい」

石田弁護人=「そうすると、高校へ行っているのではありませんか。その事件で調べられた頃は高校一年」

証人=「昭和三十八年四月の十日が多分、入校日です。事件発生はその五月一日で、二十日間きりありません。そんな関係で友達を聞いても、まだ知らないというんです」

石田弁護人=「それは分かるんです。中学時代の学友ですね、中学の時に善枝さんと三年間ですか、同じ学年だった人達を調べられたわけでしょう」

証人=「はい」

石田弁護人=「主にね」

証人=「はい」

石田弁護人=「そういう友達は昭和三十八年五月の時点では、まあ、いろんな学校があるでしょうが、ともかく学制上は高校一年の学年にあたるわけですね」

証人=「はい」

石田弁護人=「高校一年の、だから、昭和三十八年の五月の時点で言いますと、高校一年になっておる中学時代の学友を調べられたということになりますね」

証人=「そういうことです」

石田弁護人=「その学友は何人くらいの範囲お調べになりましたか」

証人=「先ほど、三人と申し上げましたのは、五月一日の晩」

石田弁護人=「一日のことでなくて、そのあとのことで結構です。初動捜査の時点ということで結構ですが」

証人=「これは恐らく、五、六人程度だと思います」

石田弁護人=「まあ、女生徒もおれば男子生徒もおりましたですね」

証人=「はい」

石田弁護人=「男子生徒は、あれは狭山の工業高校へ行っている生徒がその中に含まれていましたね」

証人=「記憶ありません」

石田弁護人=「薬研坂を上がって、しばらく行ったところに比較的新しい高等学校がありますね」

証人=「はい」

石田弁護人=「その工業高校へ行っておる中学時代の学友もお調べになったのではありませんか」

証人=「あるいは、そういうこともあったかとも思います」

石田弁護人=「それから、ついでですから、ごく簡単に聞きますが、善枝さんが川越高校入間川分校に届けていた通学路、自分の通学路というのを学校のほうに届けていましたですね」

証人=「はい」

石田弁護人=「その通学路は薬研坂のほうを通るように届け出てあったのではありませんか」 

証人=「その通りと記憶しております」

石田弁護人=「その辺の関係も調査なさったわけですね」

証人=「はい」

石田弁護人=「それでその調査は調書などお取りになられていますね」

証人=「取っていると思います」

(続く)