五月一日夕刻、兄はなかなか帰宅せぬ妹の身を案じ、通学先の学校と入曾駅を車で見回ったとされる。
学校(当時)。
入曾駅(当時)。
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【公判調書3097丁〜】
「第五十七回公判調書(供述)」(昭和四十七年)
証人=諏訪部正司(四十八歳・浦和警察署刑事第一課長)
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福地弁護人=「あなたはあくまでも十日前後だと、こういうことですね。まあ、いいでしょう。次にね、あなたは五月一日の夜、警察は、警察はというのは当時は狭山署でしょうね、狭山署は一つは張込み関係の捜査をやったと、張込みの手配その他の捜査をやったと、もう一つは被害者の足取りについての捜査をやったという風に言いましたね」
証人=「はい」
福地弁護人=「被害者の足取りを捜査するために学校に聞込みに行ったと、学校関係者の聞込みをやったということを言いましたね」
証人=「はい」
福地弁護人=「学校関係の聞込みをやったのは、大体何時頃でしょうか」
証人=「・・・・・・・・・」
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裁判長=「ちょっと、そこのところあれなんですが、五月一日ということで聞かれているんですか」
福地弁護人=「一日ということで質問してます」
裁判長=「夜ですね、夜に学校へ行ったかどうかということを聞いているんですか」
証人=「いや、学校関係の聞込みをしたというから、それは何時頃聞込みをやったかということです」
裁判長=「それが前提となるなら、そういう前提で答えて下さい。五月一日の夜」
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証人=「五月一日はあれです。学校関係と申し上げたのは、いわゆる交友関係を捜査したと、こういうことです」
福地弁護人=「交友関係というと、学校関係とどう違うんですか」
証人=「学校関係と交友関係、これはね、四月一日に初めて入校しておると思うんです。四月十日ですね。そんな関係から中学三年の友達と、いわゆる堀兼中学の交友関係も指しておるから、そういう意味で言ったわけです」
福地弁護人=「川越分校関係ではどういう人に対する聞込みをやったんでしょうかね」
証人=「これが重点は中学当時の交友関係に一日の日は向けたわけです」
福地弁護人=「そうすると、川越分校関係はやっていないわけですか」
証人=「恐らくやっても、帰った時間くらいを調べた程度で」
福地弁護人=「それでね、思い出して欲しいんですが、それはもちろん、学校へ警察官が行ったんでしょうね。聞込みに」
証人=「その点ははっきり記憶がありません」
福地弁護人=「警察はまあ、そういう聞込みをやったようですがね。警察がそういう聞込みをやると同時に、善枝さんのお兄さんの中田健治という人も警察と同じように足取りを調べたようですね」
証人=「はい」
福地弁護人=「それは知ってますね」
証人=「はい。今、言われて思い出します」
福地弁護人=「中田健治というお兄さんも学校へ行ったんでしょうか」
証人=「学校へ行ったというように記憶しておりますが、記憶の強いのは、入曾駅まで迎えに自動車で行ったということは聞いています」
福地弁護人=「学校へ行ったかどうかは確認しておりませんか、警察では」
証人=「記憶がなくなりました」
福地弁護人=「記憶がない」
証人=「はい」
福地弁護人=「入曾駅まで行ったということについては確認してあるんですか」
証人=「確認ということ自体の言葉ですが、行ったと思われる節がありましたから確認まではいっておりませんが、心証があります」
福地弁護人=「それから、主として中学時代の交友関係をお調べになったと言いましたね」
証人=「はい」
福地弁護人=「何人くらいにあたったですか。今の記憶でいいですがね」
証人=「三人程度じゃないですか」
福地弁護人=「どういう人だか、今、思い出しませんか」
証人=「その前段階におきまして、まだ殺されているかいないか分からないものですから、それで、夜、夜中、大体、十一時から二日の午前零時前後にかけて捜査が開始されたわけです。従いまして、まだ、いわゆる家出をしているか、あるいは、よそへ彼氏のところへ泊まりに行ってるか、その判断がまだつかないので、幅広い聞き方をしたと、こういうことです」
福地弁護人=「その彼氏のところへ泊まりに行ったのではないかという疑いも、もちろん持たれたと思うんですがね、そういう疑いの対象となった当時の青年ですね、何人かおったんですか。記憶で結構ですがね」
証人=「それは青年ですか」
福地弁護人=「青年でも学生でも何でもいいですよ、彼氏のところに泊まりに行ったんではないかという疑いをあなたが持たれたんでしょう」
証人=「はい」
福地弁護人=「だから、その疑いの対象になって、警察が聞込みをやったとか、多少の捜査をしたような人は何人くらいおったかということを聞いておるんです」
証人=「一日の時点では、そのようなことを頭において捜査をしたという範囲です。従いまして、青年をこれは交友関係を女の人ばかりやってます」
福地弁護人=「実際に調べたのはということですか」
証人=「はい」
福地弁護人=「だから、実際に調べた女性の交友関係にある女性が何人くらいおったのかについて今、質問しているんですがね」
証人=「その点は忘れました」
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裁判長=「さっき三人くらいと言ったんじゃないの」
証人=「いや、三人というのはですね、その晩、一日の晩の、いわゆる聞込み捜査をした対象が三人です」
裁判長=「だから今、弁護人はそれを前提として聞いておるんですがね」
福地弁護人=「それだけしか聞いてないですよ、僕は」
裁判長=「だから後日ね、男友達がいたんじゃないかとか、そういうことは、まだ、聞いていないんだ、五月一日の夜の友達の捜査はどういう範囲でやったか、男友達があるかないかというところまでやったのか、やらないのかということを聞いているんです」
証人=「やりません」
裁判長=「ただ、広い意味での頭にはおいて捜査をやったと、そういう意味ですね」
証人=「はい」
(続く)