被害者の遺体発掘時、その頭部に接する位置から玉石が掘り出された。このような玉石が関東ローム層の土中に自然に存在することはあり得ないとされる。
写真は"無実の獄25年・狭山事件写真集＝部落解放同盟中央本部中央狭山闘争本部・編、解放出版社"より引用。
【公判調書3089丁〜】
「第五十七回公判調書(供述)」(昭和四十七年)
証人＝諏訪部正司(四十八歳・浦和警察署刑事第一課長)
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松本弁護人＝「それでは現場写真の９号、と⃝という表示がある玉石ですね、石」
証人＝「はあはあ」
松本弁護人＝「これについては証拠上の検討をしましたか、押収されてあることは間違いないんですよ。これが何でこんなところから出てきたかということについて、証拠上の検討を加えましたか、特捜本部としては」
証人＝「加えなかったでしょうね」
松本弁護人＝「こういう石はこんなところから出てこんものと違いますか、あの辺の土質からすると」
証人＝「その点はちょっと、あれですね、土質からいうと、ないですね」
松本弁護人＝「それじゃ、それは結構です。では次に現場写真３５号、これは芋穴から発見されたビニール風呂敷を広げた状況ですね」
証人＝「はい」
松本弁護人＝「で、ここの切れておる端が、先ほど死体に関係した切れ端になりますね」
証人＝「はい」
松本弁護人＝「この非常に特徴のある祝じるしの風呂敷ですけれどもね」
証人＝「はい」
松本弁護人＝「これについては、これがどこで製造されたかという風なことについて、事実関係を洗いましたか」
証人＝「洗ってないでしょうね」
松本弁護人＝「なぜですか」
証人＝「なぜですかといって･･･」
松本弁護人＝「こんな特徴のある風呂敷はね」
証人＝「なぜですかといって、捜査しないからしないと言っただけですよ」
松本弁護人＝「こういう非常に特徴のあるね、どこにも転がっているようなものでない非常に特徴のある風呂敷について、その出所関係を捜査しなかったんですな、そうすると」
証人＝「そうですね」
松本弁護人＝「なぜですか、それは」
証人＝「なぜといって、しなかったんです」
松本弁護人＝「あのね、これは死体発見現場で中田健治、つまり被害者善枝の兄である中田健治にこの風呂敷を示したような記憶はありますか」
証人＝「記憶ありません」
松本弁護人＝「何か、実況見分調書によるとね、中田健治はこれは知らんと、この風呂敷については見覚えがないということを述べておるようですが、記憶ありませんか」
証人＝「記憶ありません」
松本弁護人＝「そうすると、あなた方が捜査の対象にしたのは、手拭い、それからこの荒縄ね、それからタオル、そういうものがありましたね」
証人＝「はい」
松本弁護人＝「それはわかるんですよ、もちろん、この荒縄にくっ付いておったこの木綿の紐がありましたね。この現場写真の３４号などに出ておる相当丈夫な荒縄ほど太くはないけれども、もっと丈夫な紐がありましたね」
証人＝「ええ」
松本弁護人＝「これについてはどういうものであるか、出所とかいうものについて調べましたか」
証人＝「忘れました」
松本弁護人＝「そうすると、この祝じるしのビニール風呂敷については結局、捜査しなかったということが本当ですか。忘れたということが本当なのか、捜査しなかったということが本当なのか、いずれですか」
証人＝「その点、両方とも明確に言えませんね、私どものほうは捜査をしなかったように思いますが」
松本弁護人＝「捜査の常道としては調べをするんじゃないでしょうか。これは最後の質問ですが、捜査の常道としては当然この製造元なんかを調べるんじゃないでしょうか」
証人＝「これはやはり、この地方にはもうその当時からビニールという、こういう物は流行っているものなんですよね」
松本弁護人＝「ビニールじゃない、この模様、しるし、こういう形の模様のある風呂敷という特定をして聞いているんです」
証人＝「こういう物はたくさん出ていましたですよね」
松本弁護人＝「こういう寿のやつはたくさん出てましたか」
証人＝「ええ。ということは、これと一緒に出てきた手拭いのほうが捜査の段階として、いわゆる特徴が多く掴めるという意味で、手拭いのほうの捜査をやったんです」
松本弁護人＝「まあ、いずれにしても、寿のこのビニール風呂敷については多分、捜査の対象に入れていないと、こういうことですね」
証人＝「そこまでの記憶ぐらいのところですね、それ以下の弱さです」
(続く)
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ビニール片。「寿」の印字が確認できる。
