アル中の脳内日記

アル中親父による一人雑談ブログ

狭山の黒い闇に触れる 988

【公判調書3086丁〜】

               「第五十七回公判調書(供述)」(昭和四十七年)

証人=諏訪部正司(四十八歳・浦和警察署刑事第一課長)

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松本弁護人=「それじゃ、その質問はそれで一応打切ります。最後にもう一点だけ、(記録第二冊五五八丁以下の司法警察員大野喜平作成の実況見分調書添付写真を示す)五八三丁の現場写真8号、これを見て下さい。これは証人はこの発掘状況はご覧になっておるんでしょうか、いないんでしょうか」

証人=「しています」

松本弁護人=「そうすると、この写真などの状態に置かれている時に、その場にいらしたわけですね」

証人=「見てます」

松本弁護人=「それでね、この現場写真8号にへ⃝として示されておるビニール布、多分ビニール布だと思いますが、そういうものがありますね、ここに、はっきり見えますね」

証人=「それはスカートです」

松本弁護人=「それじゃ、もっと別の写真を示しましょう」

証人=「今の8号というのは、この現場写真の8号という意味ですね」

松本弁護人=「そうすると、証人はへ⃝と書いてあるのはスカートだと思うというんですか」

証人=「思うじゃなくて、スカートです」

松本弁護人=「その次ですね、現場写真の10号、五八五丁、この死体のちょうど背中から腰あたりにかけて、上に、まあ感じとしてはビニール様のものが見えますが、これはやはりスカートですか」

証人=「その通りです」

松本弁護人=「それではその次、現場写真11号、五八六丁です。ここにはち⃝と表示して、ビニール布という表示がありますね。ビニール布と書いてありますね。これは死体を取り出したあとの状況ということで、そういう風に書いてありますね」

証人=「ありますね」

松本弁護人=「このビニール布は押収されましたか」

証人=「押収はされていますね、いたでしょう」

松本弁護人=「押収品の中にございますか」

証人=「その点は、あるいは落ちているかと思います」

松本弁護人=「このビニール布については捜査をされましたか」

証人=「このビニール布と、それから芋穴の中にあったビニールと一致するという風な見方をしてました」

松本弁護人=「いや、これはね、ご存じないんで申し上げるんですが、芋穴の中に落ちておったビニールの風呂敷の一部はですね、この現場写真11号に書いてあるビニール布ではなくて、縄に何というか、ちぎれたような形でくっつけてあったんです。だから、このち⃝という風に表示してあるビニール布は、それとは無関係です」

証人=「私はそのように見てました」

松本弁護人=「だから、これについては何か調べをしたのかと聞いているんです」

証人=「私はその芋穴のビニールと一致するという風なことで、以後の捜査はやってません」

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裁判長=「ちょっと、今のところ、何と言った。死体発掘現場から出たビニールについてね、何と言ったか」

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松本弁護人=「最後に何と仰いましたかな、もう一度仰っていただけませんか。このビニール布について捜査をしたかという私の質問なんですが、どうお答えしましたか」

証人=「これはですね、芋穴のビニールと一致をしたという風に判断をしまして、それで捜査をいたしません」

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裁判長=「いや、押収のところですよ、死体埋没地点から発掘した時に現れたビニール様のものは、とにかくあったと、それを押収したかどうかということに対して、あなたは押収したと思うと言ったんですか」

証人=「今になってみますとね」

裁判長=「いや、なんだか、ビニール出たものは押収したように思うという答だったの、押収しないと思うという答だったの」

証人=「押収というか、一緒のもので、縛ってあって、長くなってて、その先端に付いていたものという風なことでですね、そこの細かいビニール片伝々というのは押収していないと、こういう風な意味です」

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松本弁護人=「それじゃ、もう一度その点を対照しながらお聞きしたいんですが、現場写真の19号、ここにわ⃝という表示で示してあるものは、ビニール風呂敷の切りはなしという説明がありますね」

証人=「ええ」

松本弁護人=「これは一見、明らかなようにくくった跡が見られますね。蝶じるし」

証人=「はい」

松本弁護人=「だから、今お尋ねしておる現場写真の11号にいうところのビニール布というものと、このビニール風呂敷の切りはなしというものとは別のものですか」

証人=「別ですね」

松本弁護人=「ですから、その別のものであるビニール布について伺うんですが、これについては何か証拠上の検討をされたことがあるんですかと聞いておるんです」

証人=「それはそのままにしましたでしょう、きっと」

松本弁護人=「押収はしましたか」

証人=「押収はしていないでしょう」

松本弁護人=「死体発見現場からちょうど、これは頭の顔面がうつ伏せになっておりましたね。その顔面の真下から出たような位置になると思うんですよ、この位置からすれば。そうすると、かなり重要なものじゃないでしょうか。そのビニール布を敷いた上にうつ伏せにしたかも知れませんな、この位置関係からすると」

証人=「このときに見たのは、この辺に、やっぱり肥料を使った、そういったものが入り込んだという風な感じで見たんでしょうね」

松本弁護人=「記憶なければ記憶ないでいいですよ」

証人=「記憶ありません」

松本弁護人=「そうすると、今仰ったのは推測ですか」

証人=「どれがですか」

松本弁護人=「このビニール布について押収したかどうかについての記憶です」

証人=「これはしていないと思います」

松本弁護人=「証拠上の検討を加えていないんですね」

証人=「そうですね」

(続く)