アル中の脳内日記

アル中親父による一人雑談ブログ

狭山の黒い闇に触れる 490

【公判調書1600丁〜】

「現場足跡は偽造された」                                植木敬夫

二、足跡採取の怪

(四)、『第二と第三の足跡については、ひとまとめにして最初「被疑者の足跡と思料される通称地下足袋跡が印象されてあったのは二ヶ所あった」と書いてある。これは不思議なことに地下足袋を履いていたと決めてかかった書き方であるが、それが何故犯人のものと「思料される」かの説明や資料はここでもまったくない。それどころか、右の文章は単なる前文であって、その後の肝心の本文では、第二の足跡は「土がくづれており、明らかでない」と書いてあり、第三の足跡についても「明らかでない」と書いているのである。この文章の通常の意味は、形状、大きさなどが「明らかでないから、何の足跡かよくわからない」という意味である。そしてみると、この足跡が地下足袋のものということ自体も疑わしいと考えてよい。

ここまで推論してくると、われわれは重大な事実に気がつく。

前記のように、第二、第三の足跡は「通称地下足袋跡」だと前文に書いてあるが、それは、もともとそう書いてあったのではない、という事実である。調書原文を見ると、そこには最初「長」と書きかけてそれを消し、次に「素足跡」と書いてあったのである。それを別の機会に (別の機会というのは、調書全体はカーボン紙を挟み鉄筆で書いてあるが、訂正はペン書きであるからである) 「通称地下足袋跡」と訂正したものであることが明瞭である。

素足跡と地下足袋跡は、確かに形状が似ているから、どちらか判断を誤ることはあり得る話ではある。しかし、見分者がいったん素足の跡と判断して調書に記載したものを、後になって地下足袋の跡と訂正するには、そこに何かの新たな事情が介在しなければならない。それは何か。われわれには、まだそれを確かめる手段がない。しかし、いずれにしても、この足跡が素足か地下足袋か迷うほど不鮮明なものであったことだけは間違いないのである。

では、またどうしてこれが犯人の足跡と「思料され」たのか、これまた、まったく不思議な話である』

*次回、(五)へ続く。