アル中の脳内日記

アル中親父による一人雑談ブログ

狭山の黒い闇に触れる 485

【公判調書1596丁〜】(前回より続く)

「足跡は偽造された」                                      植木敬夫

(三)右のような喰違いは、例えば被害者の殺害状況についての被告人の取調べのように、自白を客観的事実に合わせるための執拗な努力を行なえば、簡単に一致させることができた筈のものである。というよりは、道順の自白と足跡の位置を一致させることは極めて単純な事柄であるから、すでに基本的な犯行を自白している被告人に、現実にあった足跡に合うよう道順の自白をさせることには、なんの努力も不要というべきであろう。

しかし、どういうわけか捜査当局はそれをしなかった。というより、右の自白調書の内容を見ると、あの大騒ぎした五月二日の夜の状況としては、ひどくあっさりしたものである。そして、右の調書の後、この夜のことはまったく追及してはいないのである。このことは、自白の他の部分とのつり合いから言っても、どうにも奇妙である。

ともかく、このような証拠の状況は、当時捜査当局がこの足跡をほとんど重視していなかったことを示すものであることだけは間違いない。では、どうして重視しなかったのか。確かなことは、以上の点からだけでは分からないが、私には、これは当時捜査当局自身が状況見分調書記載の足跡を、本当に犯人の足跡だとは信じていなかったためであるように思われる。

このことは、さらにこの実況見分調書を検討することによって次第に明らかになるであろう。

(続く)

*以前、古本屋巡りをしている中、これを見つけ四百円で購入した。その古本屋は確か、蕨駅近くの「なごみ堂」だったような記憶がある。とりわけ犯罪に関する古書は、なるべく手に入れるよう、老生は心がけている。犯罪における証拠の種類には共通項が存在し、特に指紋や足跡などはその代表格ではないだろうか。このような書物を調書と併読すると、例えば引用中の文章も一段と深く読み解ける。