【公判調書1578丁〜】
「狭山事件の特質」
中田直人
第二、被告人の主張
1.『例えば、自供のうち死体についていた縄の点について被告人は、「死体がどういう風にいけてあったか縄のことなんか判らなかったので関さんに相談したい、と言って関さんに相談した。縄が出て来たとか、そういうことが判らないから教えてくれと言った。関さんは、長谷部さんなんかの言う通りにしておけば君のためにもなると言った。だから俺はそういう風にした」と述べている。
当審関証人は、「被告人と取調中、二人だけで十ないし十五分話したことはある。“善枝ちゃんがいかっていたのはどういう風になっていたんだべ” と尋ねられた。“炊事の方でおれは判らない”と言った。そうか、と被告人は言った」というのである。関によれば、死体の模様に関する取調べに対して、被告人が答えられなかったという事実は、動かすことができない事実なのである。最初、互いに泣きながら自白した、その当の関とわざわざ二人だけになって相談し、尋ねたという事実は、被告人が本当にその事実を知らなかったこと、そして関という警察官を信頼し、これに頼り切っている有様を信じさせるに十分ではなかろうか』(続く)
*被害者の遺体に巻きつけられていた縄。写真は「無実の獄25年・狭山事件写真集=部落解放同盟中央本部中央狭山闘争本部編・解放出版社」より引用。