【公判調書1406丁〜】(前回より続く)
証人=青木一夫(五十三才)・警察官(証人として出頭時は草加警察署長)
裁判長=「全部についてどういうときに書かせたのですか」
証人=「いろいろ話を聞きまして、図面でなければ地理の状況とか物の形状とかが分からない場合に図面に書くようにと言って被疑者に書かせ、鉛筆とか紙とかは警察署のを使用しました」
裁判長=「石川が書くときは調室の、机の上とか畳の上とか板の間とか、どこで書いたのですか」
証人=「机の上と思います」
裁判長=「石川の前に机があるのですか」
証人=「はい。机を隔てて被疑者と私とが向かい合っていました」
裁判長=「机の板の上に下敷きでも置いて書いたのですか」
証人=「じかに書いたか、あるいは何枚か紙を重ねてその上で書いたか、あるいは下敷を使ったか、その点明確に記憶ありません」
裁判長=「紙は藁半紙ですか」
証人=「藁半紙の場合もありましたし、あるいは洋白といって藁半紙と同じような厚さで藁半紙よりやや質の良い白い紙があって、そういうのも使った様な気も します」
裁判長=「それは警察の用紙ですね」
証人=「そうです」
裁判長=「それを石川に何枚かまとめて渡したのですか、一枚づつ渡したのですか」
証人=「その点もよく覚えておりませんが、渡すとき二、三枚重なっていたときもあったでしょうし、あるいは一枚のときもあったかも知れませんし、はっきり一枚であったとか何枚か一緒であったとか申し上げられません」
裁判長=「紙を出して手渡したのは誰ですか」
証人=「私が出した場合もありましょうし遠藤警部補が出した場合もあろうと思います」
裁判長=「書くものは」
証人=「鉛筆が多かったと思いますが」
裁判長=「鉛筆でない場合もあったのですか」
証人=「黒い鉛筆を大体主としまして、それに行動等の説明を加える折に色のついた鉛筆を使ったことがあろうかと思います」・・・・・・続く。
*この場面での久永正勝裁判長判事は、その職務上、積極的な問答を行なう。それは真実の解明に向かう雰囲気を漂わすが・・・・・・。
ところで冤罪事件と言えば免田事件である。その冤罪被害者である免田栄さんは狭山事件の現地調査に参加していた。免田さんから見た狭山事件に対する意見や見解が知りたく、老生は古書店巡りを遂行中であるが、そう簡単には希望通りの書籍は見つからない。地団駄を踏み、過度な歯軋りで欠けた歯片を吐き出し、焼酎を体内に注入する日々が続く。(写真は『無実の獄25年狭山事件写真集・部落解放同盟中央本部中央狭山闘争本部編・解放出版社』より引用)