【公判調書1363丁〜】
弁護人=「これに見覚えがありますか(昭和三十八年六月二十一日付被告人の司法警察員関 源三に対する供述調書添付の図面“記録第七冊第一九九九丁”を示す)」
被告人=「ちょっとわかりません」
弁護人=「万年筆で書いてありますね」
被告人=「はい」
弁護人=「横の署名が鉛筆で書いてありますね」
被告人=「はい」
弁護人=「書いたような記憶がありますか」
被告人=「万年筆はほとんど向こうで持たせませんでした。右下の鉛筆書きは自分で書いたように思います」
弁護人=「下に“やまがこを”と書いてあるのは誰の字か分かりますか」
被告人=「わからないですねえ」
弁護人=「今この図面を見て、この図面を書いたか書かないか思い出せませんか」
被告人=「ええ」
弁護人=「検事の調べの時にも図面を書いているでしょう」
被告人=「はい。その時はほとんどボールペンを使わせられたと思います」
弁護人=「さっき言った様に下敷の上に紙を二枚止めて書いたことは」
被告人=「そんなことありません。一枚です」
弁護人=「(昭和三十八年六月二十七日付被告人の検察官・原 正に対する供述調書添付の図面“記録第七冊二二二一丁”を示す)これは原検事の調書に付いている図面ですが」
被告人=「これは写っていません。多分、原検事さんなどの時は下にやらなかったから」
弁護人=「あなたはボールペンと言ったが、それは万年筆で書いてありますね」
被告人=「そうです」
弁護人=「万年筆で書いたこともあることはあるわけですか」
被告人=「あります」
弁護人=「検察官の時は鉛筆はあまり使わなかったのですか」
被告人=「ええ。使わなかったです。使ったこともあります、多分」
弁護人=「(昭和三十八年六月二十三日付被告人の司法警察員青木一夫に対する供述調書添付の図面二枚“記録第七冊第二〇四九丁、第二〇五〇丁”を示す) その図面の裏が黒くなっていますが、後ろに何かを挟んだのではありませんか」
(上が二〇四九丁、下が二〇五〇丁)
被告人=「ちょっとわかりません」
弁護人=「あなたの記憶では、藁半紙二枚を止めて下敷きの上で書いた、しかしその藁半紙二枚の間に何かを入れて書いたことはない、ということですね」
被告人=「ええ、ないと思います」
弁護人=「第二〇四九丁と第二〇五〇丁の図面の裏がなぜ黒くなっているか、あなたとしては分からないわけですね」
被告人=「わからないです」
弁護人=「第一九四〇丁の図面にはあなたの名前、指印がありその右上に日付が書いてあって、指印の右横の方に“石川一夫”というのが写っているでしょう(昭和三十八年五月二十四日付被告人の司法警察員山下了一に対する供述調書添付の図面二枚“記録第七冊第一九四〇丁、第一九四一丁”を示す)」
被告人=「ええ、写っています」
弁護人=「“五月”というのも見えますね」
被告人=「はい」
弁護人=「右半分の白いところにも字らしいものが写っているでしょう」
被告人=「はい」
弁護人=「これはどうしてかわかりますか」
被告人=「わかりません」
弁護人=「狭山にいる時に二枚の紙を合わせて書くということは全然しませんでしたか」
被告人=「はっきりわかりませんがあったかも知れません」
弁護人=「先程言ったように遠藤さんが書いて、あなたがその跡をなぞるという様なことは無かったわけですね」
被告人=「なかったです」
*ここまで読んだ限り、違法な取調べは主に川越警察分室で行われた事が判る。