【公判調書1361丁(第三十回公判)】
弁護人=「これを見て思い出すことがありますか」(昭和三十八年六月二十五日付被告人の司法警察員青木一夫に対する供述調書添付図面5“記録第七冊第二〇九五丁”を示す)
被告人=「こういう風に跡が付くのです。ゴム板を敷いてやると」
弁護人=「鉛筆で“2メートるぐらい”と書いた下に“2メートルるぐらい”と書いた跡がありますね」
被告人=「はい」
弁護人=「あなたはさっきそういう風に写った上に書いたと言いましたね」
被告人=「はい」
弁護人=「ところがそれは随分離れていますね」
被告人=「はい」
弁護人=「それはどうしてだと思いますか」
被告人=「遠藤さんが書いたのではないですかね」
弁護人=「写っている字はあなたの字ですか、どうですか」
被告人=「わかりません」
弁護人=「上の鉛筆の字はどうですか」
被告人=「自分が書いたように思います。ゴム板を敷いて書いて、下の紙に写った跡にやってみろと言われて、書く時に外れてしまうことがあるのです。そうすると怒られて、それは破いてしまって又新しいのを書くのです」
弁護人=「右の縦の線は少し外れているけれどもどうですか」
被告人=「こういうのは構わないのです」
弁護人=「構わないということは」
被告人=「これは囲いでしょう。こういうのは別にどうということはないけど、道なんかの場合はややこしくなっているから間違っちゃうです。こういう場合は怒られないのです」
弁護人=「(昭和三十八年六月二十一日付被告人の司法警察員青木一夫に対する供述調書添付の図面“記録第七冊第二〇一〇丁”を示す)それを見てください」
被告人=「これは思い出しました。これは自分で書いたです。これは遠藤さんが前にやったんだから」
裁判長=「誰が先に書いたのか」
被告人=「遠藤さんです」
弁護人=「遠藤さんが書いたのですか」
被告人=「ええ。これで怒られたんだ。これは多分消されたと思います」
弁護人=「これというのは、真中の上の方に、左上から右下に斜めに書いた線の消えた跡がある、それですね」
被告人=「はい。それから、そのすぐ左の縦の線は横の線より上に突き抜けていますが、本当は突き抜けていないんだって。ところが鉛筆で書いていて突き抜けちゃって、突き抜けるのではない、ここで止まるんだと言って怒られたことがありました」
弁護人=「“さのや”と書いてあるところですね」
被告人=「ええ。これには跡があるでしょう。これは下のやつに書いたのです」
弁護人=「これは遠藤さんが書いた紙の下にあった紙にあなたがなぞったものですね」
被告人=「そうです」
弁護人=「日付や名前はどうですか」
被告人=「名前は自分で書いたような気がします」
検事=「説明のところはあなたが書いたのですか」
被告人=「遠藤さんも随分書いたからね、こういうのも」
弁護人=「説明のところや日付、名前のところも遠藤さんが書いたことがあるわけですか」
被告人=「ええ、あります」
弁護人=「それをあなたがその上から書いたこともあるのですね」
被告人=「あります。“あ”というのなどは随分怒られたです。“あ”というのはおれの書き方はおかしいんだね」
弁護人=「(さきに示した第二〇九五丁の図面を示す)」
被告人=「これは遠藤さんが書いたやつだと思います」
弁護人=「どうしてわかりますか」
被告人=「自分は、前はこういう“あ”という字を続けて書けなかったのです。書けないから構わず変な“あ”を書いちゃったら、こういう風に書くんだと怒られました」
弁護人=「すると、遠藤さんが書いた“あ”という字をあなたは書けなかったわけですね」
被告人=「そうです」
弁護人=「それで、上手くなぞることができないと怒られたということになりますか」
被告人=「そうです。川越に行ってからは全部二枚重ねて書きましたが、二〇三四丁の図面を見ると写っていないのもあります」
弁護人=「川越に行ってから直ぐですか」
被告人=「行ってから地図なんか書く時は全部二枚重ねで書いたです。でも写っていないのもありますね。狭山にいる頃はやらなかったけど、川越に行ってからはほとんどゴム板を使いました」(続く)