【公判調書1233丁〜】 証人=金子金三(二十九才・青果物商) 植木弁護人(以下、弁護人と表記)=「○○(被害者名)ちゃん殺し事件というのは、当時、
入間川なんかで大騒ぎでしたね」 証人=「ええ」 弁護人=「そこでお伺いするんですが、五月一日なんですよ、事件があったのはね。これ知っておりますか」 証人=「はい」 弁護人=「新聞なんかで盛んに言ってましたからね」証人=「はい」 弁護人=「五月一日には、あなたは店におられましたんですか」 証人=「忘れました」 弁護人=「それから、あなたの店はあなたお一人ですか。それともお兄さんがいますか」 証人=「お姉さんと舎弟と女の子と男の子です。全部で五人です」 弁護人=「全部兄弟ですか」 証人=「はい」 弁護人=「それで五人」 証人=「ええ」 弁護人=「そうするとどういう順序になりますか。あなたは何番目ですか」 証人=「二番目です」 弁護人=「上は姉さん」 証人=「はい」 弁護人=「その次は」 証人=「俺と、弟と妹と弟」 弁護人=「そうすると、姉さん、あなた、弟、妹、そして最後に弟と、こういう順序ですか」 証人=「はい」 弁護人=「失礼ですが、一番下の弟は年は幾つですか」 証人=「十幾つかな」 弁護人=「まだ未成年者」 証人=「そうです」 弁護人=「あなたのすぐ下の弟さんは」 証人=「まだ二十幾つか忘れてしまいました」 弁護人=「あなたより幾つ年下」 証人=「三つです」 宇津弁護人=「三十八年頃は八百屋さんの店をやっている、実際に店に出て
仕入れたり、売ったりしているのはあなたもやっておったんですね」 証人=「はい、やっておりました」 宇津弁護人=「あなたが中心で切り盛りしているわけですね」 証人=「そうです」 宇津弁護人=「あなたのお父さんも店に出ていらっしゃるわけですね」 証人=「そうです」 宇津弁護人=「あなたを中心に店が営業されているという状態ですね」 証人=「そうです」 宇津弁護人=「三十八年の五月一日という日に、店を休んでおったとかいう記憶は別にないですね」 証人=「ないです」 宇津弁護人=「休業したということはないですね」 証人=「はい」 宇津弁護人=「五月一日の日に雨が降って来たなという記憶ありますか」 証人=「忘れましたね」 宇津弁護人=「まあ、新聞などでね、大騒ぎになった時期ですので、あなた自身、五月一日、何をしたかということを今少し、記憶に残ってますか」 証人=「全然、忘れました」 橋本弁護人=「三十八年の五月一日頃、警察の人から何か○○(被害者名)さんの事件に関連して警察から聞かれたことはありませんか。事件が起きてからですがね」 証人=「忘れましたね」 橋本弁護人=「覚えがない」 証人=「はい、忘れました」
*この後、弁護人らに代わり
石川一雄被告人が証人に尋問する。
写真は被害者の遺体発見現場。当時の記録によると、この時現場周辺にはかなりの野次馬が溢れたらしい。ここに遺体を埋めた犯人は、以前からこの場所を見知っていたのではないか、と老生は推測する。犯行後、犯人は直ちに遺体を隠す候補地を思い巡らせ、穴を掘る時間や、目撃されずに済む立地をその記憶から導き出し、ここに決定した。いくつかある候補地からこの場所に決めたのである。あくまで推測であるが・・・。