弁護団側が横山ハルさんや横田権太郎さんを証人として呼んだのは、五月一日、彼等が農作業中、被害者及び石川一雄被告人らを目撃したか否か、を確認する為である。各々が自ら育て上げる作物の手入れに集中する中、制服姿の女子学生と青年がこの辺りを通過した場合、“ おや ”と目が行ったかどうか。写真を拡大し考察してみるが・・・。農作業を行なっていた人間はこの二人だけとは限らず、特にこの五月という時期は農薬の散布などで、予期せぬ場所に人が居たりと、私が毎年この付近を訪れた限り、それは犯行を実行する者にとって危険な環境なのである。この周辺で被害者及び石川一雄被告人が目撃されていない事実は、つまり、当日、ここにいなかった事の証明ではなかろうか。
狭山の黒い闇に触れる 310
【公判調書1224丁】 証人=横田権太郎(以下=証人と表記) 石田弁護人(以下=弁護人と表記) 弁護人=「五月一日には、山学校の方の前の畑に行かれたことはありますか」 証人=「そうですねぇ、一日には字下窪と言いますがね、その畑に行っておりました」 弁護人=「下窪という名称の畑ですか」 証人=「そうです。そういう字なんですがね」 弁護人=「それはいわゆる通称で、山学校あるいは武蔵野女学校という、その南の方になる場所になりますか」 証人=「その通りです。武蔵野女学校の玄関の前の通りから南が下窪なんです」 弁護人=「(当審第一回検証調書添付の第一見取図を示す)この中に山学校という表示がありますね」 証人=「はい」 弁護人=「その山学校から斜めに直線で結んで①というのがありますね」 証人=「はい」 弁護人=「それから、その一つ山学校寄りの十字路が⑫とありますね」 証人=「はい」 弁護人=「①及び⑫には、それぞれ南に通ずる道がございますね」 証人=「はい」 弁護人=「あなたの所有しておられる畑は、その両方の道の間にあるわけですか」 証人=「そうです。一日に居たのはこっち側になるわけです」 弁護人=「そうすると、一日に居たのは⑫の方から南へ向かっている道に面した畑ということになりますか」 証人=「そうです」 弁護人=「そうすると宮岡さだおさんの畑の近く」 証人=「そういうことですね」 弁護人=「溝がありますね。溝からどのくらい北の方にあるわけですか、あなたの畑の南端が」 証人=「そうですねぇ、まあ七、八間、北に寄りですね」 弁護人=「溝から道に沿って七、八間北に寄った所にあなたの畑の南の端が位置するわけですね」 証人=「はい」 弁護人=「あなたの畑は、その道の西側にあるわけですね」 証人=「そうです」 弁護人=「それで、道に沿ってどれ位の長さでしょうか」 証人=「そうですねぇ、三十何間かありますね。四十間位あるでしょうか」 弁護人=「その①から南に下がる道の方に向かって、畑の奥行きはどれ位あるでしょうか」 証人=「奥行きは約二十間でしょうね」 弁護人=「その奥行きの一番奥の方ですね、奥の方の部分と、この①という地点から南に下がって来る道路との、もっとも短い距離の地点は何メートル位ありますか」 証人=「そうですねぇ、百二、三十メートルありますか」(続く)