弁護人=「(原検事は)どういう風に言っていましたか」被告人=「本当に石を投げたことはないか、と言われました」 弁護人=「その時は、原検事一人で来たのですか」 被告人=「もう一人、側に付いて書く人も来ました」弁護人=「八月の末頃と言いましたね」 被告人=「八月の始め頃か八月の末頃です。接見禁止の時です」 弁護人=「その時、原検事は調書を作りましたか」 被告人=「作ったような気がします。投げたことはないという・・・、作りました。区長さんも側に居たですから」 弁護人=「区長さんというのは霜田さんですね」 被告人=「そうです。区長室でやりました」 弁護人=「取調べは区長室で行われたわけですね」 被告人=「そうです」 弁護人=「先程、刀を持っていたか、という事を聞かれたと言いましたね」「そこのところをもう少し説明してください」 被告人=「最初、二人ではないかと言われて、そうではない、一人でやったと自分が答えたら、切れ物を持っていたかと言われました。翌朝調べたらしく、そうしたら茶の木が切ってあったらしいです。それで切れ物を持っていたか、いないかという事を聞かれたと思います」 弁護人=「それであなたはどう答えたのですか」 被告人=「方を持っていたと言うと、刀は何処のだと聞かれるから、全然知らないと答えました」 弁護人=「そういう刀の話とか、熊手の形のように地図が書いてあった足跡の話とかがあったのは、いつ頃ですか」 被告人=「六月二十五日前後です」 弁護人=「石を投げたろうとか刃物を持っていたろう、とか言われたのは誰からですか」 被告人=「原検事さんにも言われたけど、主として長谷部さんなんかに言われました」 弁護人=「長谷部さんなんか、というのは、長谷部さんのほかにも居るところで長谷部さんに言われた、という意味ですか」 被告人=「そうです。調書は青木さんが取りましたが、聞く人はほとんど長谷部さんです」( 続く )
・・・残念ながらここでは、茶畑に現れた犯人が佐野屋付近に潜む捜査員に石を投げた、という情報を弁護人はほとんど引き出せていなかった。投げられた石の捜索はされたのか、また、石のような物質から指紋検出は可能であるか、謎が謎を呼ぶのであった。
犯人の一人はここから石を投げ、もう一人は茶垣を刃物で切り付けていた。向かって右側に佐野屋がある。