アル中の脳内日記

アル中親父による一人雑談ブログ

狭山の黒い闇に触れる 203

 (前回より続く)昭和四十二年五月十七日、東京拘置所に勾留中の石川一雄氏が東京高裁の裁判官に宛てた上申書、そこに書かれた事情説明の内、二つ目の“窃盗”について全文引用してみよう。「(二)窃盗、石田さん宅を退めた(注:1)のだが、家に帰れず(父と口論したので石田さん宅に厄介なってたから)   途方に暮れて居ると良ちゃん(高橋良平)と会ったので事情を話すと『家が見つかるまでダンプカーの中へ泊まらないか』というので一夜泊めて貰ったのです。が、夜が深まるにつれ寒さが加わって眠れなかったので、幸い車の中に良平さんの上着が在ったので寒さを凌いでいたのです。しかし外があまり寒かったので無断で借用し車の外に(朝五時頃)出たのです。そして二日後、私の裏の道で会ったので家に帰れた事を話し、車の中に泊まった際の事を話して、上着を洗濯してから持って行くというと『石さん宅の裏を通った時、寄るからそれ迄頼ってくれ(注:2)』というのでそのままにして置いたのです。以上の二件ですが、右事情あっても有罪に問われるものでしょうか、この事実に偽りがありますので両被害者をお調べ下さるようお願いします。この件に付て誠に恐れ入りますが、次回公判廷に於いて明らかにしていただくようおねがい申し上げます」……以上である。文中後半の「この事実に偽りが〜」のくだりは、上申書で事情説明した二件が有罪とされている事実に偽りがある、という解釈で間違いないだろう。さて、引用した上記の内容を見ると、一体どこが窃盗に当たるというのであろうか。青年同士の、よくある日常の貸し借りであり、そこには全く問題は存在せず、まして犯意など微塵も感じられない。これを窃盗罪に仕立て上げた警察の真意は・・・。今ここで語るのはよそう。                  

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(注:1)の原文。読み方が分からないが、恐らく石田さん宅を退出したとか、辞去した、という意味であろう                  

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(注:2)の原文。これは文脈から見て、(上着を)預かっておいてくれ、と解釈して良いだろう。これら二つについて、元々上申書に誤字があったのか、上申書を公判調書に筆写する際の誤訳なのか、私には調べようがない。調書には以外と誤字・脱字が存在するため、前後の文脈から推測し、意味の通ずる字を当てはめなくてはならない場合がある。