狭山の黒い闇に触れる 176
狭山事件公判調書第二審において、戸谷富之鑑定人が法廷に提出した参考資料 1〜4 内の3点目「筆蹟鑑定と裁判 2 佐々木信雄の『筆蹟鑑定の基礎理論』」の引用に入る。「はじめに、現在、我が国の筆蹟鑑定に対して批判が高まりつつある。これは一定の鑑定方法の上に立った鑑定技能の熟・未熟が問題とされているのではなく、旧態依然たる鑑定方法そのものの非科学性に対する批判であると考えられる。欧米においては、筆蹟鑑定は長足の進歩を遂げ、特にフランスでは、有名な筆蹟鑑定の誤判に基づく国をあげての不祥事、ドレフュス事件を契機に、司法警察関係、学者関係の必死の努力によって、筆蹟鑑定という極めて曖昧な部門を遂に科学的基礎の上に組み直す事に成功している。中でもロカールの理論が有名である。このロカールの理論を一目瞭然に図式化し、その途中これに推計学を適用しうる事を発見し、これを完全に科学たらしめた人は、我が国の理論物理学者、北大触媒研究所長の戸谷富之博士である。本文では、まず万人に無理のない思考段階を一歩づつ踏みながら、読者と共に、あるべき科学的筆蹟鑑定の形に辿り着き、それがロカール・戸谷の理論であることを示す、という順序をとり、その都度、在来の鑑定方法に触れるつもりである。以下しばしば例えによる類推論法を用いる。その目的は例えとの並列によって、取り違えを防ぐためである」(続く)