アル中の脳内日記

アル中親父による一人雑談ブログ

狭山の黒い闇に触れる 153

平岡検事にかわり橋本弁護人の問答が始まる。橋本弁護人 : 「被検、照合両文書の中から稀少性をどういう風にして発見することになるか」戸谷 : 「現状では、大体問題になるような文筆を書かれるような人と似た職業の人とか、あるいは似たような学歴の人とか、そういったようなところから任意に抽出して、そういった人達が書く字の特徴的なものが稀少性を差定する一つの基準になると思います」橋本弁護人 : 「すると被検、照合両文書のほかに第三の、いわば標準値を表現するところの統計表が必要であるということになるか」戸谷 : 「結局そういうことになります。何が目安になり得るかは何人かの人を集めてみて、そうしてその中で共通するものと、共通しない各個人特有のものとの識別ができることだと思います」橋本弁護人 :「極端な言方をすれば、日本人全部の筆跡の標準値が出されておれば、被検、照合両文書の稀少性を発見することは極めて容易であるということになるか」戸谷 : 「そうです」橋本弁護人 : 「指紋の場合と同様か」戸谷 : 「そうです。指紋の場合、日本人一億人について全部調べてあるわけではありませんが、現在までには恐らく一千万か二千万は調べてあって、その分類方法が決まっており、恰度血液型と同じように、十項ないし二十項目の型の分類があります。そしてそれが、各々合う確率は一億分の一になるわけで、そうすれば同一の指紋をもつ確率は一億分の一で二人同じ指紋をもつということは非常に珍しいということであります」橋本弁護人 : 「鑑定人の理論からすると、被検、照合両文書にはかなり大量の文字がないと正確な結論は出しにくいということになるか」戸谷 : 「簡単に言えばそういうことです」橋本弁護人 : 「大体どの位の量があればいいということになるか」戸谷 : 「推計学的にやろうとする場合には、少なくとも二字以上必要であります。但し二字の場合は非常に不確定さが多くなります。即ち信頼度が薄くなります。従って出来れば数字から十字以上が必要になると思います」橋本弁護人 : 「その程度あれば大体結論が出せるということになるか」戸谷 :「まだやっていないので結論が出せるかどうか分かりませんが、先程述べたロカールムッシューの例から言いますと、ロカールは二百字位集めたということですが、今の推計学を用いれば二百字はいらないと思います。大体十字以上から三十字位になると、信頼度はあまり違わないである結論が出せるようになりますから、そんなにはいらないと思います。確からしさということを百パーセントに近くするためには多ければ多い程いいということにはなるわけです」(続く)                              

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