アル中の脳内日記

アル中親父による一人雑談ブログ

狭山の黒い闇に触れる 146

この日記を書くに至る理由の一つに、狭山事件公判調書第二審を、私以外にも、もしかしたら目を通したいという奇特な方がおられるかもしれない、ならば調書から忠実に引用し記述したいと、こう考えていた。私的考察は控え目に、引用は原典に忠実にと。しかし裁判所速記官による反訳の過程で、平仮名から、漢字やカタカナへの変換がやや足りないと私には思え、当ブログに引用する際、該当する漢字やカタカナへ変換することに決めた。ただし全てではないが。私的考察は控え目に、は継続する。さて戸谷報告であるが、まだまだ続く。前回、筆跡鑑定で一番最後の要素になるものは字画構成の“比”の分布、“角度”の分布などの比較に還元されると述べた。戸谷鑑定人:「〜そういうことから、分布の仕方をどうすればいいかということとなるわけですが、分布の比較ということ自身は科学の範疇では常にやっていることで実際は難しいことはないわけです。科学朝日五十四頁第五図を見ると分かりますが、第五図で、例えば、sという人の書いた分布があります。                       

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t という人の書いた分布があります。u という曲線が書いてありますが、これは一般の人が書く大体の平均値の書方の分布を示しているのです。そうするとこういう色の測定をして分布曲線をその人の癖がもっとも出ると思われるものについて、その癖がサザエさんの場合であったら、こういう点を押さえておけば、これはサザエさんに見えるというところ、あるいは字画から個人のその人の固有の特徴は、例えばどういうところと、どういうところの比を見ればいい、どういうところの角度の比を見ればいい、どういうところのはね方のはね具合を見ればいい、という要素が分かれば、そういう要素を取り出して、そういう分布を書いてやる。そうして例えば第五図の場合にはsという人の書方というのは一般とはかなり違った書方をしているわけで、例えばB分のAという比が非常に大きい、Aが木偏の第一画が第二画と同じ大きさに書くという特徴を持っていて、その特徴がtという人とも勿論違いますし、uという人とも違うわけで、こういうような場合には、sという人が書いたかどうかを見る上に、そういう分布の仕方をしてやれば、これは多分sが書いたであろうということは比較的確実に言えるわけです。ところがtという人の場合は、一般にも見られる分布と非常に似ているわけです。そういうような場合には、B分のBとAという字の特定のものの比を見てもこれは何の判別もできない。こういうsのような人の場合には、それは稀少性があるというわけで、しかもsという人はその字を書くときの分布が余り広がらないような場合はそれは常同性があるということになり、こういうような場合は判定可能になるのであります。問題は、日本字の場合にどういうところに個人特有の筆癖が出やすいかという研究が、分布を比較して、被検文書が照会文書と同一人によって書かれたものであるかどうかを判定する場合に必要になるわけであるが、そういったものの研究は日本には残念乍ら殆ど皆無に近いわけです。これは一人が二人が適当に自分の身の回りの人の字を集めた後では、当然範囲が狭過ぎて何の結論も出来ないわけで、これはもっと大がかりに長い年月をかけて至急に研究し始めなければいけないと思いますが、現状の日本は真実の要素がどういうところにあるか、例えば先程の電子計算機の例で言えばサザエさんを書かせるためにはどういうところを押さえておけば後は勝手に手を動かし、足を動かし、笑わせたり、怒らせたりしても、それはサザエさんであるということを間違いなく分かるように電子計算機に始めに命令を与えておく、それだけは外さないようにしておけば、どんなに書いても長谷川町子が書いたサザエさんと非常に似たものが書けるわけです。そういったものが、日本の字の中で、どういうところにその個人の真実の筆癖が出るかということを、もっと研究しなければ、日本字に関する筆跡鑑定は中々信用できるところまで行きにくいのではないかと思うわけであります」・・・。狭山事件は昭和三十八年発生、引用中の公判調書第二審は昭和四十一年の段階である。ということは文中に出てくる電子計算機とは今で言うパソコン的な機器を指すのであろうか。当時はまだまだ日本の過渡期であったのだな。