アル中の脳内日記

アル中親父による一人雑談ブログ

狭山の黒い闇に触れる 124

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「ぶ」字の検査  第一八七号証の一(脅迫状)中の「ぶ」字は第一筆と第二筆が連続して「了」字の如く書かれ(R.Sに示す)第三筆は左下方に向って斜線状に(Tにて示す)書かれている。第四筆は第三筆に比してその位置が比較的高く書かれ、濁点は第一筆の転換部の右肩に右下方に向って傾斜する短い書線によって書かれているのが認められる。(第五四図参照)これに対し、被告人石川一雄から内田裁判長宛の手紙中の「ぶ」字もまた第一筆と第二筆を連続して書き「了」字の如き形状をなす点、第一八七号証の一と類似し、第三筆を左方に傾斜する斜線にて書く点及び第四筆が第三筆に比して高い位置に書かれている点も符合している。(第五五図参照)                                                   その他の文字の検査  以上に述べた文字の他「す、ん、月、日、を、い」等の他、各文字についても検査を行なったが、類似点が多く検出され、有力な相違点を検出することができず、特筆すべきものがないので煩雑を防ぐためここに記述することを省略した。              考察   以上を総合して考察するに、検査物件中、第一八七号証の一と内田裁判長宛の手紙は、いずれも共通する運筆形態と文字形状によって書かれ、偶然の一致とは考えられない符合点と共に、類似するところが多く検出されているに反し、有力な相違点が検出できないので同一人の筆跡と認めざるを得ない。僅かに第二〇号証の一の筆跡は筆勢渋滞するところに疑問があるが、極めて微細の点における特異な運筆軌跡にも共通するところが認められる。第一八七号証の一の筆者は書字能力(使筆技能)が著しく拙劣であるが、その文中において誤字が用いられているのは筆者自身が正しい文字を知らざるためとのみ考えることはできない。偽罔の手段として筆者が書くことを不得手とする文字を故意に当て字で書く場合も考慮に入れなければならない。第一八七号証の一の中、第三行目の「車出いく」と書かれている「出」の文字は筆者が「で」の文字を知らないのではなく、同文中の六行目と七行目に「て」の文字を書いていることによって明らかである。また「き」を「気」と書き、「な」を「名」と書いている点についても同様である。従って「警察」を「刑札」と書いているが、果して筆者がその文字を知らなかったか否かは疑問である。ともあれ検査物件はいずれも書字能力が伯仲しているが、そのうち第二〇号証の一の筆跡が他に比して僅かに渋滞しているのが認められる。以上の理由により鑑定結果の項に述べた結論に到達した。昭和四一年八月一九日  鑑定人   高村  巌・・・。以上は公判調書967〜971丁より引用