京都市教育委員会指導主事・磨野久一による鑑定書 「脅迫状における文章構成および用語」においては、【必要な用件が、順序を追って記述されており、全体として正しくまとまっている。段落のくぎりも妥当であり、重要な箇所については、文字を大きく書き、とりたてた記述になっている。「二十万円」とせず「金・・・」を付していることも、正しい金額表記である。訂正箇所の少ないことから考えても、一気に書きあげられるだけの文章構成力のあるものと考えられる。】とある。また【本脅迫文のように、その表現にあたって、横書きを選んだ筆者は、平素、横書きの文章を書く場をもち、横書きに書きなれている者であると考えられる。】とも考察されている。
「五月2日」と「さのヤ」の訂正文字について書道家綾村勝次による鑑定書「脅迫状における筆跡」では、【書き直した箇所はあるいは左手で書き加えたもののようである。それは落筆の点に問題がみとめられる。(中略)書き直しの文字の最初のうちこみには無理な筆のあたりがある。その適例は「の」字である。本文のもとの「の」字と比較すれば、いかに苦しんで書いたかはよくわかる。つまり書き難いのに無理に書いたからである。換言すれば左手で書いているからである。また、刑札、気んじょ、死まう、等はよほど考えて造って書いだものであろう。】と鑑定されている。なお「さのヤ」とは、事件当時、酒や雑貨を扱う小さな店で看板すら出しておらず、地元の人しか知らぬ店であり、犯人はここを身代金受け渡し場所に指定した。余談であるが、当時この店の主人はよく吠えるスピッツを飼っており、犯人からすればマイナス要因となり得るが、つまり店の存在は知っていたがスピッツを飼っているという情報は持っていなかったと言える。犯人が事件全般を通してどの程度の情報量を持っていたか推測してゆきたい。