アル中の脳内日記

アル中親父による一人雑談ブログ

日雇いの頃 29

私は唯物論に軸足を置き観念論には距離を取っているが、一連の堤さんとの出会い、よって大工道具類に興味が湧き、そして売却段階に入った祖父母の家から辛うじて救出できた道具箱を眺めていると、目には見えぬ縁の連鎖とでも言おうか、そういう思いがフト頭をよぎり、世には、理屈では説明できぬ何かが存在することもあろうか、と感慨に耽った。そして、これを補強する出来事が数年後に起きる。私の叔父が岩手県の沿岸部で温泉を経営していたが、ある日の夜明け頃、枕元に亡き祖母が立っていて「もう充分稼いだろう、そろそろ辞めなさい」と囁いた。温泉経営は波に乗っていてNHKでも紹介される程だったが、叔父は疑うこと無くその年の暮れに温泉を北海道の旅行会社に売った。翌年、3.11・東日本大震災が発生、大津波により温泉は跡形も無く消失した。あまりにも綺麗に消失した為、売却先の旅行会社が、温泉の詳細な所在地を叔父に照会してきたそうだ。親戚の皆に、老後のキャバクラ通いを笑われている叔父だが、本人がこの温泉に関する一件を語り出すと立場が一転、我々は畳に頭をなすりつけひれ伏すのであった。