アル中の脳内日記

アル中親父による一人雑談ブログ

日雇いの頃 28

水沢市(現・奥州市)の実家に戻り、大工道具箱内の検品を開始し、一つ手に取るたび、いちいち驚嘆してしまう。柄の無い鋸刃が八枚。表面に鎚で打ったような打痕が薄っすら見える。まさか玉鋼製ではなかろうなと軽く期待する。鉋の刃が五枚。それぞれに風格ある銘が彫ってある。しかしここに全ては書けない程、そして更に、用途不明な、しかし大工道具であるのは間違いない物体達が道具箱に詰まっていた。一息入れ、親戚に当時の詳細を尋ねてみた。話によると祖父は、額に入った鑿三十本揃いや、大量の砥石、鉋、鋸、墨壺など様々な大工道具を所有していたが、やがて老衰で亡くなると、その葬式が終わるや否や、焼香で訪れた弟子たちが形見分けと称し、ほとんどの大工道具を持って帰ったとの事であった。昔の職人達のしきたりに従った行為であり棟梁から弟子へ受け継いでいく習慣らしい。それを聞いた煩悩のかたまりである私は、地団駄を踏み悔しがった。気を取り直し、それでも三箱分に及ぶ大工道具を残してくれた亡き祖父に心から感謝したのだった。           

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今後に残された課題は、たとえばこの鉋の銘から、当時これを作った鍛冶屋を特定できるのか?という、思っただけで心が折れそうな難問である。