アル中の脳内日記

アル中親父による一人雑談ブログ

日雇いの頃 20

西暦2000年直前、その日はコンテナの本数が少なく、われわれ労働者たちは休憩所で一服していた。午前11時頃だろうか、警察の車両が5〜6台、倉庫の敷地内へ入ってきた。警察官と捜査員らしき人たちは、倉庫のすぐ裏手に流れる京浜運河に向かった。それと共に小型の護送車から降ろされた男が、両隣りを捜査員に挟まれついて行く。休憩所から丸見えであり、我々はすぐさま表に出て野次馬と化し彼等を遠巻きに見守った。すぐに女子事務員や他の作業員も駆けつける。護送車から降ろされた男が岸壁から1メートルほどの海中を指差している。そこにはコンクリが詰まった青色のバケツが沈んでいた。我々はこのバケツの存在をかなり前から知っていて、なぜかと言えばここら辺で立ちションベンする時、絶好の的になっていたからだ。さて、男は護送車に戻され入れ替わりに鑑識の人たちが現れた。海中から青色バケツを回収し、広げたブルーシートの上でバケツからコンクリを取り出し始めた。と、ここでお昼のチャイムが鳴り、我々は昼メシを喰いに別棟に移動した。午後1時に戻った所、すでに警察の車両は撤収していた。そして数日後テレビのニュースにより、この一連の出来事の全容が明らかになる。それとは相模湖で首なし死体が見つかり、捜査の末に犯人を逮捕、供述により切断した頭部を発見、事件は解決へ向かうと伝えていた。なんと、我々の立ちションの標的となっていた、あのバケツに人の頭が入っていたとは驚きであった。ニュース映像には一瞬だが、我が仕事場である倉庫の端っこが映っていた。