アル中の脳内日記

アル中親父による一人雑談ブログ

日雇いの頃 15

私がAさんと出会ったのは、冷凍倉庫で日雇い仕事を始める前だ。当時、高田馬場に本社を持つ清水舞台という、いわゆるイベント会社で私はアルバイトを始めた。これもまた日雇い労働と一緒なのだが。時を同じくAさんも、カメラマンとしては中々食えず、やむなくイベント会社に流れてきた。似たような境遇の人間が渦巻く中、Aさんが突出した行動を取るのを私は見た。それは東京ドーム公演でポール=マッカートニーが来日し、リハーサルを終えた時だ。ステージから降りて会場中央のコントロールタワーに向かうポールに対し、Aさんは柵越しに長方形のプラスティック片を振りかざした。奇跡が生まれ、気がついたポールがAさんの元へ歩み寄る。プラスティック片をよく見ると、それはポールが愛用するヘフナー社バイオリンベースと同年代のピックガードであった。微笑むポールに、すかさずマジックペンを差し出しサインを求めると応じてくれたのだ。これでも飽き足らないAさんは、警備員を買収しスタッフパスを入手し、ポールの楽屋に入り本人とツーショット写真を撮ってしまったのである。ピックガードのサインと写真を確認した私は呆れるばかりであったが、むしろAさんには並外れた行動力があると気付き、危険な組織に属していないか、慎重に背後関係の調査に着手した。