アル中の脳内日記

アル中親父による一人雑談ブログ

日雇いの頃 13

「お前、銃の掃除を手伝え」と責任者のグレッグが声をかけてきた。キャンプ座間に通い始めて半年ほどたった頃だ。このクラブハウスは銃を扱う関係上、建物内の三分の一が鉄格子で仕切られ、その右奥に頑強なコンクリート製の銃・火薬く保管庫があり、左のスペースは銃のメンテナンス器具や散弾のリロードマシンが置かれ専属の老軍人が鎮座している。なぜリロードマシンがあるのか聞くと、節約だ、と答えた。グレッグの許可を得て私は鉄格子の中に入ることが出来た。関係者以外立入禁止エリアである。感動、感無量である。老軍人がこの日スキート射撃で使われた散弾銃三梃をならべ、銃身内のクリーニングをせよと細長いブラシを渡してきた。実銃など触れたことのない私は面食らったが、とりあえず上下二連タイプを選び中折れ状態にして銃身内にガンスプレー?を吹き付け、ブラシを通し煙突掃除の要領でこすった。老軍人は、射場から拾い集めた空薬莢からプライマーを抜き専用器具で新たなプライマーをセット、更にリロードマシンでプラ製の詰め物、火薬、散弾を押し込み薬莢の口を閉じ、一発一発再生している。私はこの時の状況を思い出すたび、「俺の人生は終わった」と考えてしまう。夢が叶ったからだ。月刊GUN誌を読み漁り大藪春彦に耽溺、常に枕の下にモーゼルHSCのモデルガンを忍ばせた中学時代の記憶が走馬灯のように走り去って行くのだ!ああ、うう、これ、これなんだよ!俺の人生に必要なのは!鈍く光る銃口に向かいブツブツ語る私を、薄ら笑いを浮かべた老軍人が見まもっていた。