アル中の脳内日記

アル中親父による一人雑談ブログ

日雇いの頃 4

山谷の親父さんに「ヤミ印紙」の話を聞いた。アブレ手当をもらうには、前一カ月の中で白手帳に十三枚以上、印紙が貼られていなければならないが、もし十三枚に足りなかった場合どうするのか?何故なら十二枚しか印紙が貼られていないと、アブレ手当の権利が発生しないからだ。これについて親父さんは、こう答えてくれた。「山(山谷のこと)にはよう、ヤミ印紙貼ってくれる所があるからな。一枚千二百円よ。割印も押してくれる。あんまりソレばっかり使うとばれる。どこにって?役所よ。知ってんだよ、役所も。昔五〜六枚使ったんだ、ひと月によ。そんで職安の窓口に出したらよ、わげえ職員がよ『あんまり使うとダメですよ』って言ってきたんだ。どっかの会社が流したか、倒産した会社から流れたか判らんがね。そのヤミ印紙貼ってくれる所は暴力団が仕切ってるさ。だからあまり行かんようにしてる」。印紙自体は本物で、割印も役所に通用するという事は、この日雇い保険制度を利用していた会社から流出しているのは確実だろう。親父さんの仲間の一人は、白手帳の名義を変え三冊作り時間をズラしアブレ手当を取りに行っていたという。 (後日、雇用保険法で確認したところ、正確には二ヶ月で二十六枚か二十七枚、印紙が白手帳に貼付されていると日割で失業手当が給付される事が分かった。作業日当の金額により、失業手当額は三段階に分かれている。親父さんは日当一万四千円なので、三段階で一番高い七千五百円を給付される。)                                  ほんの少しだけ、山谷の闇が覗けたのだった。