アル中の脳内日記

アル中親父による一人雑談ブログ

日雇いの頃 2

冷凍倉庫で日雇い作業の日々を十年程続けたが、ここに集まってくる人間はアクの強い輩ばかりだ。極真空手黒帯、大道塾茶帯、元アマレス、キックボクサー崩れカンフー野郎といった暴力崇拝系の人達が主で、これにさまざまな分野の個性派が続く。私が親しく接した人々は後者のほうで、海外を渡り歩いて来た山岳部OB、仕事中も背中にギターを背負っているブルースマン、三千枚ものレコードを集めアパートの床が抜けたコレクター、通り魔川俣軍司と同じ店に勤務していた元板前、大森の公園に展示されている古い機関車から板バネを盗み、それで刃物を作っている男、琵琶湖に潜り沈没した江戸時代の木造船から舟釘を抜き貯めている和鉄マニア、などなど非常に深い人生を送る人々との会話は、私の人生に陰鬱な影響を与えてくれた。さて、コンテナの本数が多く人手が足りない場合は、いよいよ山谷の連中の登場だ。日本三大ドヤ街の一つ台東区清川町、通称「山谷」から必要な頭数を揃え連れてくる。この人達がまた強烈な負のパワーを放っており、現場へ来たは良いが「メシはまだか」「でづら(日当)はいつ出るか」と騒ぎ出すのだ。なんとか鎮めて午後四時までの労働につかせる。そんな日々を過ごすうちに、一人の親父さんと仲良くなり、山谷の話をいろいろと聞かせてもらった。