押入れの中を整理中、探していた本が見つかったが、
見事にダブっていた。最近ではこの類いの古本ですらアマゾンあたりでは数千円の値がつけられているが、
¥105と¥500で買っていた私の価値基準は正常だったと思う。¥500の方は、蕨市にある「なごみ堂」で入手したが、すると多分、もともとこの本は高円寺の西部古書会館開催の古本市で、¥200あたりで転がっていたと推理できる。¥300が店主の儲けであるが、コストを考えれば納得の値付けであろう。さてこんな雑本をなぜ買ったのか。その理由は本書の後半部分に集中している。著者が、豊田商事会長、永野一男の出生にまつわる謎を解明するため、愛知県や岐阜県を訪ね、男のルーツを明らかにしてゆく様が書かれておるが、なかなか良いルポとなっていて興味をそそられたのである。甚大な被害者、被害額を生んだこの事件であるが、永野一男の過去が明らかになるにつれ、 虚しくやるせない、こんな生き方しか残されなかった男だったかと、憐れみの情だけが残ったのであった。
(画像=本書より転載) 永野一男会長は昭和六十年六月十八日に刺殺される。本書は昭和六十年七月十日第七刷発行であり、執筆時点において、この展開は予想外であったと思われる。手と手を合わせ合掌した。