アル中の脳内日記

アル中親父による一人雑談ブログ

坂戸 T文庫

日頃、どんなに気を付けていても、降りかかってくる災難というものがある。徒歩で目的地へ向かう時、私は車の交通量がなるべく少ない道を選ぶ。信号待ちの時は瞬時に安全位置をはじき出しそこへ立つ。最近では、運転手は起きてるか?あるいは高齢者がドライバーでは?などの注意事項が加わった。以上の行動を実践しただけで生存率は格段に上がるのだ。このような努力を経て私は埼玉県坂戸市にある〈T文庫〉に到着した。店の向かって左側に古本があり、右側にはプラモデルや雑物が並び店出版の書籍も陳列されている。                                  ところで私の対人姿勢は[敬語を使用][謙虚][礼儀作法]などを重視した真摯な姿勢を心掛けている。         さて、店の扉を丁寧に開け奥の間に声をかけると白髪の店主が現れた。明らかに迷惑そうな表情である。   「大変失礼ですが、こちらの本を見せて頂いてもよろしいですか?」私が問うと店主は「ウチは本屋なんだよ!何か用かね!」と答えた。私、「はい、その通りですが、本を見せて頂いてもよろしいですか?」店主は険しい顔で「ああ?じゃあ見ろよ」と言い放った。この時点で、私が何か失礼な態度をとったかと思い返すが、むしろお辞儀まで交えた行為に落ち度は見当たらない。険悪な空気に満たされた店内で私は棚を見始めた。だが、ここから更なる負のアピールが店主により開始された。レジ横から取り出したハタキを逆に持ち、柄の先で棚や窓枠、空き缶などを叩き出したのだ。気が散って本を選べぬだとか、そういう問題をはるかに超えた店主の行為に私は恐れおののいた。およそ入店から五分でこの展開である。「カンカンカンバシッコン!バンバシ!」この状況を言葉で表すならば「拒絶」「拒否」「帰れ!」である。すでに涙目の私は一冊の古本を抜き取り、「コ、コレを頂きたいのですが」と店主に差し出すと「お、うむ」とレジに戻り精算を開始、紙袋に包み私に渡す。「お忙しいところ有り難うございました。」礼を述べ店外へ出た所、  「ガラガラ、バシッ」と扉が閉まりロックがかけられた。凄まじい店だなぁ。映画〈ノー・カントリー〉の殺し屋“シガー”ですら後ずさりし、コイントスを諦めるであろう。話を戻すが、入店後、店主の態度に業を煮やした私は、「セドリ」というカウンターパンチを放った。アジトに戻り検品を始めたが・・・。

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(直感で選んだ。レア本であってくれ!)                       

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(ほう、全3巻とな)。中々見つからんだろうな。                   

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(百円で購入。カウンターパンチは決まった!)だが、この店に私は二度と行くことは無い。予測出来る災難は避けるに限るからだ。尚、以上の出来事は2019年頃に起こったが、実は昔の古本屋には割と居たんですな、こういう店主が。なので現代においては、むしろ希少価値が高い逸材と解釈し、だとすると後年、伝説の店と語り継がれるココで買物が出来た私は、「体験談を聞かせてくれ」との、日本の古本屋連合協会からの要請に、一千万円のギャラで応ずることになるだろう。皮算用を済ませた私は「災い転じて福となす」と繰り返し唱え、数珠が擦り減る程両手でシゴいたのだった。