アル中の脳内日記

アル中親父による一人雑談ブログ

2022-02-01から1ヶ月間の記事一覧

狭山の黒い闇に触れる 162

(続き) 「二年後に裁判自体の公正でないことや、四つに裂かれた明細書そのものの出所についても多くの疑問が持たれ始め、文豪ゾラをはじめとして、多くの知識人がユダヤ人弾圧の陰謀であるとして非難した。ゾラが〈予は弾劾す〉という公開状を発したのもこの…

狭山の黒い闇に触れる 161

(前回より続く)*フランス*「フランスでは十四〜十五世紀から筆跡鑑定を職業とする専門家が現れギルドを作っていた。一五七〇年には国から保護を受け、筆跡鑑定人(master-writer)として筆跡鑑定をする特権を王から与えられた。その後多くの変遷を経てルイ十…

狭山の黒い闇に触れる 160

(前回より続く) 「筆跡鑑定の法廷での扱われ方には、その後多くの変遷があった。裁判は陪審制度であったが、陪審員の中には文盲も多い。そのため、筆跡鑑定には裁判官が独自の立場で必要を認めると、鑑定人に鑑定を命じたという時期もあった。鑑定人は資格を…

狭山の黒い闇に触れる 158

(前回より続き) 「偽作とか文書偽造が歴史に華々しく登場するのも、ちょうどこの時期である。BC一世紀頃のローマは、共和制が崩壊し始め、野心的な武将が悪い知恵を巡らし、陰謀を凝らしていた時代である。シーザー(Caesar)の暗殺されたのはBC四四年であるが…

狭山の黒い闇に触れる 157

戸谷富之鑑定人提出の参考資料その1 ・「科学朝日」より戸谷富之の「筆跡鑑定いまむかし」四九頁から五五頁。「筆跡はその文字なり、文章のもつ意味のほかに、書いた人の性格や筆癖、その書いた時の状況など、さまざまの情報を含んでいる。シャーロック・ホ…

狭山の黒い闇に触れる 156

狭山事件公判調書第二審1006丁から始まる第二十四回公判において、戸谷富之鑑定人は裁判長の許可を受け、本鑑定の参考資料として以下の四点の写を提出、本調書の末尾に添付した。1、科学朝日昭和四十一年六月号掲載(四九頁から五五頁まで)戸谷富之の「筆跡鑑…

狭山の黒い闇に触れる 159

(前回より続き) 「中世(四〜一五世紀)においても、文書偽造は横行した。署名、私文書、宗教書、土地財産の権利書といったものが、私利私欲のためには、数多く偽造・偽筆された。法律的文書、公文書は著名な人々よって偽造され、現在でも真偽の困難なものが多…

狭山の黒い闇に触れる 155

これより戸谷鑑定人による筆跡鑑定事項中第二の鑑定を行なったための資料としての被告人質問が始まる。筆跡鑑定事項第二の鑑定とは、石川一雄被告人の筆跡に関する、(イ)埼玉県警察本部刑事部鑑識課警察技師・関根政一、同 吉田一雄連名の昭和三十八年六月一…

狭山の黒い闇に触れる 154

裁判長 : 「鑑定人が筆跡鑑定の要素として述べられた常同性というのは、稀少性の常用されるという意味か」戸谷 : 「そうです」裁判長 : 「常用ということは必ずしも数量にはよらないわけか」戸谷 : 「そうです。例えば、一人の人が書く字でも大体二通りとか…

狭山の黒い闇に触れる 153

平岡検事にかわり橋本弁護人の問答が始まる。橋本弁護人 : 「被検、照合両文書の中から稀少性をどういう風にして発見することになるか」戸谷 : 「現状では、大体問題になるような文筆を書かれるような人と似た職業の人とか、あるいは似たような学歴の人とか…

狭山の黒い闇に触れる 152

平岡検事 :「個人特有の筆癖が常同性をもっているかどうかということの見方であるが、これは一つの文書の中でも同じ人が同じ字を幾つか書いている場合があるが、そういう場合には、その中に似たような筆癖が全部の字に出ておれば、それは常同性があるという…

狭山の黒い闇に触れる 151

狭山事件公判調書第二審1024丁。戸谷富之鑑定人の報告が終わり、平岡検事による問答が始まる。平岡検事 : 「鑑定人の言われる稀少性に関係して、余人によって書かれたものではないということを確かめる範囲はどの程度までということになるか」戸谷:「例えば…

狭山の黒い闇に触れる 150

戸谷富之鑑定人 : 『5.欧米における筆跡鑑定の歴史と現状について』「ヨーロッパでも同じような経過で、初期の頃は先ず、類似点を挙げるだけだということは日本の場合と全く同じで、それは"筆跡鑑定と裁判:3"に挙げてある通りですが、割合科学的だと言われ出…

狭山の黒い闇に触れる 149

戸谷富之鑑定人 : 「明治初年頃は間々古書家が鑑定していましたが、その後だんだん古書家が鑑定することがなくなり、古文書学をやっておられる歴史の先生であったり、或は法医学が日本の大学にできるようになって、何でも裁判のことは法医学者に依頼するとい…

狭山の黒い闇に触れる 148

引き続き戸谷報告を引用。戸谷富之鑑定人 : 「4.日本における裁判での筆跡鑑定の系譜について。日本における裁判での筆跡鑑定の系譜というのは"筆跡鑑定と裁判 1 "七十四頁以下で森長英三郎が利用されているのに一番端的に出ておりますが、日本では豊臣秀吉…

狭山の黒い闇に触れる 147

北海道大学教授 : 戸谷 富之鑑定人の報告は続く。「3の1、相同性、相異性の統計的意味、及び3の2、稀少性、常同性の統計的意味というのは、結局分布としての比較をするのでなければ、相同性、相異性の比較ということは、真実はできないわけです。適当なもの…

狭山の黒い闇に触れる 146

この日記を書くに至る理由の一つに、狭山事件公判調書第二審を、私以外にも、もしかしたら目を通したいという奇特な方がおられるかもしれない、ならば調書から忠実に引用し記述したいと、こう考えていた。私的考察は控え目に、引用は原典に忠実にと。しかし…

狭山の黒い闇に触れる 145

戸谷鑑定人:「科学朝日の五十五頁第七図はサインをできるだけ簡単に、しかも余り間違いなく、ある特定個人のサインであるかどうかを見分けるためにフランスのブロッソンが国際犯罪科学会誌に載せたものでありますが、その第七回(第七図?筆者注)のサインは何…

狭山の黒い闇に触れる 144

前回の戸谷報告をまとめると「人間が書く文字、その字画構成はある程度の分布を示す。この分布を比較することが肝要であり、従って統計的方法、推計的方法を導入しなければ真実の比較はできない」と、こうなろうか。さて公判調書1017丁上段十三行目から戸谷…

狭山の黒い闇に触れる 143

戸谷 富之鑑定人による公判廷での口頭報告。今回は『3.従来の筆跡鑑定方法は色々の点で不十分であると思うがそれがどういう形のものでなければならないかということで、筆跡鑑定における統計的方法の必然性』についての報告である。戸谷鑑定人:「大勢の鑑定…

狭山の黒い闇に触れる 142

戸谷報告「ここで5の欧米における筆跡鑑定の歴史と現状についてちょっとふれますが、従来の筆跡鑑定方法がヨーロッパにおいてはどういうものであったかというと、歴史的には全く同じ経過を辿っています。ヨーロッパでも似ているところだけをあげて同一人とし…

狭山の黒い闇に触れる 141

戸谷報告は続く。稀少性ということを検討する場合には当然に一般に皆がどういう字を書くかということの検討までしなければいけないが「然し、そういう検討は従来の筆跡鑑定の方法では殆どみられません。一、二の鑑定人が稀少性という言葉は使いませんが稀少…

狭山の黒い闇に触れる 140

戸谷報告は続く。「私がみた鑑定書の中で、ある事件で一人の人が鑑定しているのは、ただ勝手に適当なものを取って来てではなくて被検文書の中での例えば木偏を全部集めてみる、そして集めた木偏同士で比較されようとしているのがありましたが、これはかなり…

狭山の黒い闇に触れる 139

戸谷鑑定人:「例えば科学朝日五四頁に表示したaの人もbの人の人も私は非常によく知っておる人ですが、aという方の人は割合神経質ではない。ですから字を書くとき第一画と第二画などをいつもそうとんちゃくして書いているわけではありませんから、割合に第一…

狭山の黒い闇に触れる 138

(前回より続く)「それから、a及びbの木偏の第一画、第二画の比をグラフに書いたのが科学朝日五四頁第四図であります。 その第四図はaという人とbという人が木偏の第一画の長さaと第二画の長さbの比、b分のa、それの分布をどう書くかということを一応実験した…

狭山の黒い闇に触れる 137

戸谷 富之鑑定人による報告そのニ。〈従来の筆跡鑑定方法について〉「今まで見た幾つかの鑑定書でみられるのは、相同性あるいは相異性ということは割合に論じてある。然し稀少性あるいは常同性については殆ど触れていない。例えば札幌の札という字が被検文書…

狭山の黒い闇に触れる 136

( 前回より続く)戸谷 富之鑑定人「〜それは全く論理的な問題であって、筆跡鑑定の要素ということについては、問題がないのではないかと思います。筆跡鑑定が可能かどうかということは、今ヨーロッパでも非常に問題になっております。それは結局希少性をもつ…

狭山の黒い闇に触れる 135

(・・・・・・前回より続いて戸谷 富之鑑定人の報告) 「その希少性とはどういうことかというと、どうしてもある個人特有の筆癖があって、その筆癖は幾ら自分で隠そうと思っても隠し切れないような筆癖がなければいけない。然も、その筆癖は多くの人に同じよ…